正しい『玉の輿』の乗り方
「宮内副社長! こちらの女性が現在お付き合いされている方ですか?」
「彼女にプロポーズするというのは本当ですか?」
そんな質問が飛び交う中、樹さんは私をカメラから隠すように抱きよせた。
「そうですよ。プライベートなことなので、あまり答えたくはありませんが、彼女が私の最愛の女性です」
「それは二股ということになりませんか?」
リポーターの質問に、樹さんは不適な笑みを浮かべながらこう返した。
「なりませんね。いつまでもそんなバカげた事を言ってないで、早くあちらに行かれた方がいいんじゃないですか? 大事なスクープを撮り損ねますよ?」
樹さんが視線を向けた先には、サングラスをかけた西宮麗華と中谷さんの姿が。
二人はとても親密そうに腕を組みながら出口に向かって歩いていた。
それを見たリポーター達は二人を目がけて、一斉にかけだしていった。
もしかして、西宮麗華がずっと憧れていた幼なじみというのは中谷さんのことだったのだろうか?
いや、中谷さんをカモフラージュに使っている可能性だってある。
「樹さん……これっていったい」
不安げに樹さんを見上げると、耳もとで「ごめん」と謝られた。
「なんで謝るの?」
ちょっと泣きそうになりながら問いかけると、樹さんは私を強く抱きしめてこう言った。
「菜子を不安にさせたからだよ。でも、信じてくれ。俺が愛してるのは菜子だけだ」
切なく響く樹さんの声。
朝から苦しかった胸の痛みは嘘のように消えていった。
もう大丈夫。
私は樹さんの言葉を信じられる。
私が力強く頷くと、樹さんは手に持っていたジュエリーケースからダイヤの指輪を取り出して、私の薬指にスッと嵌めた。
「菜子。待たせてごめん。結婚しよう」
この三カ月の間、ずっと待ち望んでいた言葉だった。感極まった私の目から涙がポロポロとこぼれ落ちる。
「ん? 返事は?」
樹さんがニコリと笑いながら、私の顔を覗き込んだ。
「お……お願いします」
私は樹さんの背中に手を回し、ギュッと思いきり抱きついた。
その瞬間、パチパチと背後から拍手が起こった。
「おめでとう! お姉ちゃん!!」
「良かったね、菜子。おめでとう!!」
「樹くん。娘を幸せにしてやってくれ」
「樹さん。娘を末永く宜しくお願いします」
佳子達の声でハッと我に返る。
そうだった。
すっかり二人きりの世界に浸ってしまっていたけれど、家族と友人の前だった。
気まずさいっぱいに振り返れば、佳子達がニヤニヤした顔で笑っていた。