クールな次期社長と愛されオフィス
「アコ、お前の辛い状況に気付いてやれなくてごめん」

そう言うと、呆然と立ちつくす私のそばにゆっくりと歩み寄った。

「社長がアコにひどいことを言ったみたいだな。そこまで兄が卑劣なことをする人間だとは思わなかった。でも、そういう兄を作ってしまったのも俺の責任かもしれない」

そして寂しそうな瞳で私を自分の胸に抱き寄せる。

ここが部長室だということも忘れて、私も思わず湊の体に自分の腕を巻き付けた。

「アコのことだから、全て自分で責任を取るつもりで辞めようとでも考えていたんだろう?そんなことはする必要ない。アコは全く悪くないんだから。俺の責任で俺が全ての後始末をする」

「でも、そんなことしたら」

私は今にも泣きそうな目で湊の顔を見上げた。

湊は優しく微笑みながら続ける。

「とにかく、この状況の一番てっとり早い解決法は俺が兄の望む通りこの会社を去ればいいだけの話だ。社長にはもう話はつけてあるから大丈夫だよ。アコは何も心配いらない」

「でも、新規事業はどうなるんですか?」

「アコがそんなことを心配する必要はないさ。ただ、兄の思うようにはさせない」

湊は笑いながら、私の髪を撫でた。

社長に新規事業を手渡してないってこと?

「俺はこの会社を一旦離れるけれど、自分の夢をあきらめるつもりは全くない。だから、アコも決して自分の夢をあきらめるな」

私は涙を必死に堪えながら、湊のシャツのをぎゅっと握り締める。

泣きそうだけど、今は湊を涙で送りたくなかった。

湊なら、きっと大丈夫。

今までのように、全て上手くやるはず。

私はこくんと自分に頷くと顔を上げた。

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