クールな次期社長と愛されオフィス
会長は秘書達を見回しながら口を開いた。

「このたびは、色々と秘書の皆さんにも迷惑をかけたと思いますが、大変な中、よくやってくれました。後は私達や上層部でこの混乱をどうにか鎮め、また今まで築き上げた宇都宮商事の名前を取り戻すために尽力をつくす所存であります。そのためにも、今回の騒動を引き起こした張本人である宇都宮悠社長には退任してもらい、新たな社長をここに任命したいと思います」

マリカ先輩が「いよいよね」と私の腕を突きながらささやく。

「しかしながら、」

会長はコホンと咳払いをした。

「新社長でありますが、現在こちらに向かう飛行機が若干遅れており、まだ到着しておりません。本来ならこの場で社長本人に話をさせたかったのですが申し訳ない」

軽く会釈した会長のもとへ慌てた様子で走り寄ってきた秘書室長が会長の耳元で何やらこそこそと話している。

「ん?到着したか?」

会長が顔を上げ、秘書室内が一瞬ざわめいたその時。

「遅れて申し訳ありません!」

そう言って秘書室に飛び込んできた男性がいた。

「おお!間に合ったか」

会長はその彼の方に笑顔を向ける。

「うそでしょ」

マリカ先輩が口を開けたままその方を見つめている。

会長は大きな声で続けた。

「こちらが新社長に任命した宇都宮湊です」

湊?!

本当に??

その一段と輝いた彼の姿に体中鳥肌が立ち、心が震えて止まらなくなりそうだった。

「皆さん、大変お待たせして申し訳ありません。このたび、新社長の任命を受けました宇都宮湊です。海外新規事業開発部部長の折りには大変お世話になりました」

そう言った湊は秘書達の顔を見回す。

そして、私と目が合った時、少し微笑んで頷いた。

涙が溢れそうになる。

湊?本当に湊なの?







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