クールな次期社長と愛されオフィス
湊はあちらこちらから何やら質問を受けるも、穏やかな笑みで落ち着いて英語で対応している。

さっきまでの湊ではなく、今ここにいるのは輝きをまとった一人の有能な社長だった。

繋いだ手が熱い。

これほど記者達から注目を浴びているのは、オープンセレモニーを前日に控えるこのジャパニーズフードショップと湊に関心が高まっている証拠なんだろう。

その時、湊は私の肩を抱き寄せて流暢な英語で皆を見回しながら何か言った。

すると、前にいた人達から拍手と歓声が沸き起こる。

え?なになに?

途端に目の前にいた人達が私達のために道を空け始めた。

まるで花道みたいになった場所を私と湊は通り抜け、湊は皆の方を振り返り頭を深々と下げた。

私も慌てて頭を下げる。

よくわからないんですけど!一体湊は何て皆に言ったのかしら?

とりあえずあの落ち着かない集団からようやく解放されてホッとする。

湊は動じた様子は微塵も見せず、「じゃ、行くか」と私に声をかけた。

「びっくりしました。湊は全く平気なんですね」

冷静に微笑み腕時計に目をやる湊に投げかける。

「あんなのしょっちゅうだからね。アコもわかってると思うが、こちらの新聞や雑誌記者達だよ。店の宣伝と一緒にしっかり俺達のことも宣伝しておいた」

俺達のこと??

湊は口元を緩めると、私の手をひいてゆったりと足どりで再び歩き始めた。

しばらく行くと、広い公園が見えてくる。

「あれがセントラルパークだよ」

「そうなんですね。私でも聞いたことあります」

その広い公園には子どもから老人までが楽しそうに集っていた。

それぞれが思い思いに羽を伸ばしている。

「自由ですね。ニューヨークって」

そんな景色を眺めながら呟く。

「自由、だ」

湊はその言葉を噛みしめるように繰り返した。

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