クールな次期社長と愛されオフィス
「は、はい!」

とりあえず上司の命令は絶対だから従うしかない。

急いでパソコンを閉じ、自分のデスクを片づけると更衣室へ足早に向かった。

「えらく慌ててるけど大丈夫?」

廊下ですれ違ったマリカ先輩が目を丸くして私を見た。

「宇都宮部長と出張入りました!すみません、遠出になるのでそのまま直帰します!」

「は?」

マリカ先輩は口をあんぐり開けたまま廊下を走り去る私を見送っていた。

そりゃそうだよね。

まだ朝9時半だもん。

しかも直帰だなんて、どこまで行くんだって感じ。

まぁマリカ先輩には明日にでもゆっくり事情話そう。

でも。

なんだかワクワクしていた。

あのおいしい紅茶を作ってる場所に行けるってことと・・・・・・あと。

いやいや、余計なことは考えないでおこう。

オフホワイトのカーディガンを羽織り更衣室を後にした。

ビルの表に出ると、既に部長は車の中で待っていた。

ぴかぴかの黒くて大きくてきれいな車の中で。

この見慣れないというか普段興味もない車の前についているマークを見る限り外車だろうか。

そんなことはどうだっていい。

とりあえず部長の乗る運転席の横まで急いで行った。

すぐに私に気付いた部長に助手席に乗るよう指で合図される。

相変わらずだわと思いながらも、宇都宮部長の助手席だなんて!

身分不相応だと恐縮しながら乗り込んだ。

車の中は革張りのいい匂いがする。

それから、部長の爽やかなオーディコロンの香りと。

「向こうの社長にもこれから行く旨伝えておいたから。色々案内してくれるそうだ」

「はい、ありがとうございます」

なんだか高級な社会見学みたい。

窓の外の景色が流れていくのを見ながら、私の気持ちはとても高ぶっていた。





< 24 / 120 >

この作品をシェア

pagetop