クールな次期社長と愛されオフィス
「堂島」

「は、はい」

高速に向かう田舎道で部長はようやく口を開いた。

「前お前に渡した紅茶とはまた違う種類のものを3つほど買っておいた。今日のドライオレンジのブレンドもなかなかよかったが、他にも色々と試してみたらいい。あと、日本の紅茶にはやはり日本の水が合う。この紅茶に合いそうなミネラルウォーターも一緒に買っておいたから使ってみろ」

「はい、ありがとうございます。早速明日からお店で出させて頂きます」

なんだ、そっちの話題か。

ぶっきらぼうだけど、結局は優しい言葉にはぐらかされているような気分になる。

かき乱されてるのは結局部長じゃなくって私の方じゃない?

信号が赤になり車が停車した時、思い切って部長の横顔を見上げて言った。

「あの・・・」

「堂島」

私がしゃべろうとしてるっていうのに、部長はこちらに視線を向けて私の名前を呼んだ。

「今日は夜まで時間あるか?」

それは突然だった。時計を見ると16時を少し過ぎていた。

「え?あ、まぁ大丈夫ですが」

「せっかくこちらまで来たし俺に付き合わないか。いい場所に連れていってやるよ」

「いい場所?」

部長はふっと微笑むと、高速への道をUターンして元来た道の方へ車を走らせた。

結局フィアンセの嘘の話は置いてけぼりのまま車は加速度を上げていく。

山の方へ。

ウネウネと続く山道だけど、車の乗り心地がいいからか、それとも部長の運転がうまいからなのかちっとも気分が悪くなることはなかった。

時々緑の間からオレンジの夕日が差し込んでくる。

毎日都会で過ごしている私にはとても新鮮で癒された。

山道を抜けたところに牧場が広がっていた。

ここで飲む牛乳は最高なんだと絞りたての牛乳を私に買ってくれた。

そして、ここでしか味わえないできたてチーズがふんだんに入ったハムサンドと。

ハムサンドを手にした途端、自分がものすごくお腹が空いていることに気付く。

気付いた瞬間お腹がくーっと鳴った。

「すみません!」

恥ずかしすぎるんですけど!

お腹をすぐに押さえたけれど時既に遅しで、顔が一気に熱くなる。

そんな私を助手席に乗せたまま部長は声を立てて笑った。

部長ってこんな声で笑うんだ。

初めて見た。部長がこんなに笑ってる姿。

笑ってる横顔も、きれいだった。

ちっとも崩れない品の良さを称えた笑顔のままゆっくりと車は発進する。











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