クールな次期社長と愛されオフィス
「お腹減っただろ?食べていいよ」

運転しながら部長はくすくす尚も笑いながら言った。

「でも、車の中だし」

こんないい車汚しちゃったらやっぱりまずいもんね。

「そんなこと気にしてくれるのか。お腹が鳴るほど減ってるのに?」

そう言いながら、部長はまた笑い出した。

「笑いすぎです!」

思わず、ムッとして言葉を返す。

部長は口に手をやり、なんとか笑いを抑え込んだ。

「車なんか汚れたって全く気にならない。食べろよ、俺は全然構わないから」

このまま遠慮してたら、またお腹が鳴りそうだった。

「じゃ、申し訳ありませんが遠慮なく頂きます」

私はそう言うと、サンドイッチの袋を開け頬ばった。

チーズの酸味と甘みが柔らかく口の中に広がった。

「おいしい!」

思わず声が出た。

「だろう?できたての新鮮さに敵う者はない」

私がおいしそうに食べているのを、部長は目を細めて見つめていた。

優しい目。

仕事の時には見せたことがない目だった。

今日は何度部長にドキドキするんだろうっていうくらいまたドキドキしていた。

「もうすぐ着くぞ。お前に見せてやりたい場所」

見せたい場所?

いつの間にか夕日は沈み、辺りの森は闇に包まれていた。

時々背の高い木々の向こうに星が見える。





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