クールな次期社長と愛されオフィス
道路の脇道を進んでいくち、人気のない真っ暗な森に入っていった。

え?

どこに向かってるの??

いつの間にか唯一の光は車のライトだけ。

もしかして、もしかして、こんな人気のない場所で・・・・・・部長は私に何か悪いことしようとしてる??!

恐る恐る部長の横顔を見る。

ライトの明かりがわずかに部長の顔を浮かび上がらせている。

相変わらずクールで口元は固く結んでいた。

「あの、どこへ」

小さな声で呟く。

「どうせ、俺が何かよからぬことでも考えてるんじゃないかって思ってんだろ」

部長は前を向いたままくすりと笑いながら言った。

「いえ、そんなことはないんですが、なんだか暗くて不安になっちゃって」

「もうすぐ着く」

それから数分進んで車は停車した。

「降りるぞ」

こんな真っ暗な場所、恐いんですけど!

運転席の扉が閉まる音がして、慌てて私も外に出た。

夜の冷たい空気は森の匂いが充満していた。

真っ暗で何も見えず立ちつくしていると部長が私の腕を掴んだ。

「こっちだ」

「ひゃ」

思わず声が漏れる。

そのまま部長に手を引かれて暗い道を進んだ。

その時。

目の前が一気に開ける。

空には満天の星空。

そして地上にも満天の夜景が広がっていた。

「うわ、すごい」

口を両手で塞いでその素晴らしい光景に目を見張った。

こんな美しい夜景、見たことがない。

「きれいです」

「そうだろ?俺も初めてここを見つけた時は腰抜かしそうなほど驚いた。ここは空気も澄んでいるから天気のいい日はこんな風に星空にも吸い込まれそうだ」

「ええ、本当に」

冷たい空気が感動で熱くなった体を気持ち良く撫でていく。

いつまでも見ていられるほどの贅沢な景色だった。

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