+小悪魔恋愛2+
え、何が?
柚の視線の方向に目をやると、向かいの角を曲がった車がこちらに近づいてくる。
ドクン、ドクン……
思わず柚を抱きしめようとしてしまったオレの腕が、静かに足元へと下がって行った。
「今から飲み会なんだよぉ。恵美の友達が迎えに来てくれるって言ってね」
そう言いながらオレを振り返り、止まった車の運転席に手を振る。
あぁ、今日一緒に話してたあいつか…
「バイバイ、紗香ちゃん。純平くんと陸もまたね」
今度はオレたちに手を振った柚。
なんだろうな。
なんなんだろうな……。
でも、柚がそうするならオレだって
同じようにするしかないじゃん。
「うん…またな」
オレは柚と同じように笑って、車の窓に向かって手を振り返した。
オレ…上手く笑えてた?
動き出す車。
自分がするべきことさえ、全然わからなくなってた。
でも走り去るその瞬間に見えた柚の顔が、シュンとしてて、すごい悲しそうで。
「柚……」
結局オレの方が辛くなってて。
そんな顔するなら、なんでそういう仕草とるんだよ。
なんで普通に怒ってくれないんだよ。
「お前らまじ面倒くせ〜」
車のハンドルを握ったまま俯いて動かないオレの隣で、純平がぼそっと呟いた。