君を愛で満たしたい~御曹司のとろ甘な溺愛~
それで、打錠機——粉末状の薬剤を加圧して錠剤の形状にする機械——を変更してみたらどうかと提案したのだ。

そのメーカーの使っている打錠機は古いタイプのもので、最新式のものとは性能がまるで違ったのだ。


本来ライフテクノロジー事業部は、原材料などを売り込むのが主であるけれど、クライアントが必要とあらば、なんでも用意するのが商社の仕事。
打錠機も然り。

以前、産業機械事業部から資料を取り寄せ学んだことがあったので、いくつかの打錠機が頭に浮かび、そのうちのひとつを勧めてみたのだ。


「勝手に口を挟んですみません」
「俺は褒めてるだろ?」


彼はクスクス笑う。


「だけど、北里が示したメーカーの打錠機ではうまくいかない気がする。今度の新薬は、目新しいというわけでもなさそうだから、薬価はそれほど高くつかないだろう。そうすると、この製剤だけのために打錠機を入れ替えていると大赤字だ」


そこまで考えが及んでいなかったので、唖然とした。
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