天才策士は一途な愛に跪く。
わたしは、いつも感謝してるんだ。

「・・・有難いことだよね、ホント。
私、遥が大好きだよ!!これ以上、心配させないように頑張るから!!」

私は遥と目が合うと案じた様子の彼女の視線に、心から感謝した。。

「もう・・。これ以上に頑張っちゃ駄目だからね。」

まだ何か言いたそうな遥は、困ったように眉を下げると何も言わずに私の横に座った。

誰かに気にかけてもらうって有難いことだって・・。
そんなの解ってる。

だけど、私には帰る場所もいつの間にか失っていた。
認められていく論文や研究とは裏腹に、自分が進みたい場所も漠然としていて良くわからない。

東京で一人暮らしをして14年が経とうとしていた。

中学を出た私は、高校から音大付属の学校へと入学した。

だけど、私は途中でピアノを辞めてしまったからそこには居辛くなっていた。
そのまま音大に進学する事は難しかったから、私は東京の大学を受験した。

母とは、ピアノを辞めた頃から険悪になり。
小学生4年の夏に母が再婚した父との間に、妹が出来た。

母は彼女に必死にピアノを教えるようになった。

11歳下の妹は出来損ないの私とは違って才能溢れる妹だった。

長くて細い私の指を「神様がくれた天賦の才」だと言って、
入賞するたびに頭を撫でながら笑顔で喜んでくれた母は・・もはや遠い昔の記憶だった。

透明感のある美しい波の寄せては返す波音の1音1音が耳に心地いい。

「ねえ、晶・・・。今、何考えてた?」

不安そうに私の顔を見つめる遥は少しだけ寂しそうな表情を浮かべていた。

「ううん、何も・・。ただ海の色が綺麗で風が気持ちいいなって。」

ザザン・・。

遥は私を見つめていたけど、何も言葉は発しなかった。

私は砂浜に座して広大な美しい海を仰ぎ見ていた。

戻ってきた瑠維と怜は、施設内のバーベキューレストランに予約を入れてくれたようで
スパ施設に入浴後、そこでの夕食となった。

エメラルドグリーンのプライベートビーチは私たちの貸し切り状態だった。
瑠維が予約してくれたオープンして早々の会員制リゾートに招待された私たちは

巨大なホテル施設に目を見開いて、カート移動で渡り歩く広大な敷地に大興奮だった。

「おいっ、瑠維すごいなー。
このBBQスペース!!オシャレすぎだろ。」

「本当だ!!何これ!外国製の煙が少ない新しい鉄板じゃない。初めて見たー!!」

怜と遥は興奮気味で広々としたBBQスペースを見渡して嬉しそうに声を上げていた。

「肉は持ってきてくれるから、飲み物頼もうぜ!!ほら、怜もこっち来てメニュー見ろって。」

興奮気味の怜はレストランをキョロキョロと散策しては目に入るオシャレな器具に
大興奮の様子だった。
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