天才策士は一途な愛に跪く。
「何で晶が山科メディカルに・・?お前、二条の専属研究員だったろ?」

一瞬で雰囲気が変わった瑠維に、遥も怜も少し焦った様子だった。
私は落ち着いた声で瑠維に声をかけた。

「あの日、瑠維に偶然ホテルで会った日に誘われたの。
山科くんの所の新規部門で私の研究分野だったから・・。
出来るだけ早くに来て欲しいって。」

「そ、そうなのよ!!
初恋の人との運命的な再会もすごいけど、部門の責任者なんてすごいよね!!
しかも山科のイケメン御曹司なんて・・。すごい運命的じゃない。」

憧れの眼差しでうっとりしている遥に瑠維は不機嫌そうに睨みをきかした。

「確かに・・山科聖人は恰好いいし、スマートだったよ。
・・でも、再会してすぐに引き抜きって可笑しくないか?
二条だって急にお前が抜けたら困るだろ。」

「でも、その話は聞いた時には・・。
既に、二条くんも納得して了承済みだって話だったの。」

その言葉に、驚いたように瑠維は目を見開いた。

言われてみれば、可笑しな話だとは私も思う。

「二条くんて・・。タメ口じゃん!!
あ、そうか。二条慧と山科聖人は同郷だったな。
てことは・・、晶って、二条とも同級生なのか??」

怜は呆然とした表情で私を見た。
私は困ったように「彼が転校するまでだけど・・。うん。」と、頷いた。

十数年ぶりの再会を遂げた日に、急に引き抜き人事の話をされるなんて確かに変だと思う。

でも、美桜ちゃんから話を聞いていて目をつけてくれたのだとしたら何の不思議もないけど。

「全体的にそれ変だろ・・!!
同級生だって言ったって、何年も会ってない相手に
いきなりうちの会社に来い、なんて声かけるかよ・・。」

不機嫌そうに手元のビールを一気に飲み干した瑠維は、横の皿にあった怜の肉を箸でつまんで
口にいれた。

「おい、それ俺のだって!!もう・・。デリカシーないよね瑠維は。」

呆れた顔で怜はジョッキのビールをぐびぐび飲み干した。

ニヤニヤした顔の遥は、私の顔をチラっと見ると嬉しそうに声を上げた。

「山科聖人が来て欲しいのは、研究者としてだけじゃないんだなー・・。これが。」

「・・じゃあ、何なんだよ?」

噛み応えのあるTボーン肉をむしゃむしゃ嚙みながら、遥の言葉に顔を顰めた瑠維は
呆れた声を上げた。

「実はね、あの山科聖人が晶のことをっ・・・ムグッ。」

私は真っ赤になりながら力任せに遥の口を両手で塞いだ。
モゴモゴと、口を動かし暴れる遥を必死で抑える。

「おいっ!!だから、何なんだよ・・。」
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