天才策士は一途な愛に跪く。
店を出ると、雨が降っていた。

私は、ため息交じりに折り畳みの傘を差して地下鉄の駅へと急いだ。

いきつけのお店まで、地下鉄で4駅。
そこからは徒歩で5分の距離だった。

少しだけ路地を入った一角の、メキシカン料理のお店。

  カランカラン

店に入ると、すでに飲み始めていた3人が夢中になって話をしている
様子だった。

「マスター、コロナちょうだい!!」

「瑠維ってば声、大きいな・・。」

店の入り口にまで聞こえてきて、クスりと笑顔を浮かべた。

「ごめん、遥!!遅れたー・・。」

「おっ、遅いぞーって、全然早いじゃん。」

「だな・・遅くはないだろ!!まだ20時にもなってないね。」

瑠維に怜が突っ込みを入れる。

「こっちこっち!!」

手を振って迎えてくれるみんなにホッと気持ちを落ち着かせた。

「どうだった、初日は?」

怜は私にコロナビールを笑顔で渡してくれた。

「うーん・・。まぁ、ぼちぼちだよ。明日、機器が搬入されるからそこからかな。」

「新しい職場は、大丈夫そう??」

遥も心配そうに声をかけてくる。

「うん。みんな良さそうな人たちばっかりだった。・・けど。」

金髪に碧眼の美青年・・。

アオイ=フォン=マッケンゼン。

彼の姿がぼんやりと脳内に現れる。

「・・・けど??
けどって、やっかいなのでもいたのか!?」

少し酔っぱらっている様子の瑠維に

「何でもない、何でも!!」

と、引き気味にブンブンと首を横に振って否定した。


「まぁ、山科聖人よりも・・。
お前にとって、やっかいな奴なんていないんだろうけどな。」

一瞬、驚いた私は動きを停めた。

「・・えっ。」

「おい・・。止めろって瑠維っ。飲みすぎだぞ?」

怜は窘めながらも、こちらを心配そうに見上げた。

「どうしてそんな事言うのよ、瑠維??感じ悪いよ??」

遥もイライラした様子で瑠維を見た。
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