天才策士は一途な愛に跪く。
「・・別に何でもない!!・・マスターもう一杯!!」

瑠維が、険しい表情で酒を飲んでいた。

その尋常じゃない様子に私は不安になる。

「瑠維??山科くんと何かあったの??変だよ。」

「別にあいつと何かあった訳じゃないけど・・。」

「あいつ、お前の研究・・・。利用しようとしてるんだろ??」

その言葉に、私は固まったように身動きが出来なくなった。

一番言われたくない言葉を、瑠維に言われた私はどう答えていいのか解らない。

固まったまま、きっぱりとそこを否定できなかった。

「おい、瑠維!!言っていい事と悪い事があるだろ!?」

怜が珍しく眼鏡の奥に怒気を孕ませて声を荒らげる。

「そうだよ・・。利用しようとしてるって・・。
何でそんな話をあんたが知ってるのよ!!」

瑠維は押し黙って、その場に沈黙が流れた。

店はザワザワと賑わっていて、BGMも絶え間なく鳴り響いている。

私は、ゆっくりと席を立った。

「・・・今日は帰るね。私も初日で疲れてるから・・。ごめん。」

千円札をテーブルに置くと、踵を返して入り口へと走った。

「えっ!?晶・・・!!?」

「おい・・。」

慌てた様子の怜と遥は目を見合わせて困ったような表情を浮かべて入り口を見た。

ガタッ・・。

「あああっ!!もう!!」

「俺も・・帰る!!!これで払っといて!!」

バンと、一万円がテーブルの上に叩きつけられた。

「ちょっと!!これ・・。暴飲暴食しても使い切れるかわかんないんだけど。」

遥は困ったような表情で、怜を見た。

「そうだな・・。だけど、2人は話し合ったほうがいいよ。」

「確かにね。瑠維は、来た時から変だったもんね・・。じゃあ、、」

「「乾杯。」」

置き去りにされたコロナビールを2人は苦く笑いながら、飲み干した。



ザァァァァ・・・。

繁華街の店を飛び出して、土砂降りの町を私は駅に向かって歩いていた。

何でこうなるの・・。

泣きそうになりながらも、聖人に帰ることと、今の居場所の連絡を入れた。

「晶、あきらっ!!」

バシャッ。
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