天才策士は一途な愛に跪く。
駅の構内に入ろうとした頃、水飛沫を立てながら瑠維が慌てて走って追い付いてきた。

「・・・ごめん。俺、無神経な事言ったな。悪かった!!」

瑠維は傘があまり機能しなかったような、びしょ濡れの姿で捨てられた犬のように
私を見上げた。

私は、急な謝罪にポカンと口を大きく開けた。

「・おい。・なんだよ、その顔!?」

「いや、あんなに攻撃的になって絡んできたのに・・。
あっさり謝るからさ。」

吹き出しそうになって口元に手を当てて、瑠維を見上げた。

真っ赤になった瑠維が視線を反らして困ったような表情を浮かべた。

「ばっ!!あれはだから、、心配だったんだよ!!
俺は、晶が好きだって言っただろ。」

私はストレートな告白にびっくりして目をしばたいた。

ストレート過ぎて、スルーしてしまいそうだった・・。

「ごっ、だから、ごめんて断ったでしょ!?私が好きなのは・・・。」

「解ってるよ・・。山科聖人だって聞いた!!
だけど、その山科聖人はお前の研究の利益欲しさに、、
山科メディカルに引き抜いた・・って。俺は許せなくて・・!!
お前の純粋な気持ちも、研究への情熱も・・。
そんな綺麗なモンを利用するなんて、俺は許せないんだよ!!」

大きな黒目がちの瞳と目が合う。

真剣に私を案じてくれている瑠維の気持ちが嬉しかった。

「瑠維・・・。」

「お前の何年もかけた研究ごと、あいつに取られてもいいのかよ。」

私の肩を掴んで、真剣な目で私を見下ろしていた。

瑠維のその気持ちは嬉しかった。

「俺は嫌だ!!お前の大切な研究を利益にしようとしてるなんて・・。
お前だって・・。どっかで気づいてるんだろ。傷ついて欲しくない!!」

痛いくらいに瑠維の気持ちが流れてくる。

私は震える唇をぎゅっと噛んだ。

その時だった。

「森丘様。」

私は背後から聞こえた呼び声に振り向いた。

「森丘様、お迎えに参りました。お車を停めてありますので、こちらにどうぞ。」

ザワザワと道を急ぐ駅の構内で、軽く礼を取る聖人の秘書の姿がそこにあった。

「帰るのか?」

「うん・・。瑠維の私を心から心配してくれる気持ちは嬉しかった。
だけど、信じる事にしたの。」

「山科・・聖人を?」

真っすぐに私を見つめる瑠維は、苦しそうにその名を口にした。

私は、ゆっくりと整理するように話を続ける。

「・・自分が好きになった人を、最後まで信じたいじゃない。」

「信じて、例え間違っていたとしても!
それは私が決めたことだから、傷ついても大丈夫だよ!!」

私はそう言って笑った。

瑠維はその笑顔を眩しそうに目を細めて見た。

「そっか・・。そうだな。」

「俺もそんな晶だから好きになった。」

雨に濡れた髪は水滴が滴る。

美少年風の童顔な瑠維が余計に格好良く見えた。
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