天才策士は一途な愛に跪く。
「解った・・。お前がそう決めたならもう何も言わない、応援するよ。」
私は大きく頷いた。
「うん、、!!今度はまたゆっくり、楽しく飲もう!!」
「ああ・・。悪かったな!!余計なお世話だったわ。」
「ううんそんな事ない。気持ちは嬉しかったよ!!またね、瑠維。」
笑顔で瑠維に手を振ると、秘書に案内されて車へと向かって歩く。
瑠維とちゃんと話せてよかった・・。
心からそう思った。
瑠維は雑踏の中に消えて行く晶の姿を黙って見つめていた。
「自分が好きになった人を、信じたいじゃない。」
晶のセリフが胸に突き刺さった。
「そんな晶だから好きなんだよ・・。俺は。」
ボソッと呟いて、笑った。
「南條さんは、晶の言ってた通りの人ですね・・。」
急に後ろから聞こえた声に、訝し気に眉を顰めて振り返った。
コインロッカーの前に、腕を組んでほほ笑む山科聖人の姿があった。
「・・あんた、なんで。」
「君に、僕が晶の研究を利用しようとしていると・・。話した人物は誰ですか?」
ビクッと身体を震わせた瑠維が、大きな黒目勝ちな瞳を大きく瞬かせた。
「そんなの・・。知ってどうするんですか!?」
「悪意を感じただけです・・。その話を貴方にしたとしたら、貴方なら
どう動くかを熟知している人間が吹き込んだのでしょうから。」
その言葉に、瑠維は驚いて聖人を見つめた。
コツ・・。コツ・・。
雨でぬかるんだ駅の床を、瑠維目掛けて聖人が歩を進める。
ゴクリと喉を鳴らした瑠維は、自分の前で立ち止まった聖人と対峙した。
聖人は、一枚の紙をそっと瑠維に見せた。
「・・・これ。これ・・は・・。」
驚いた表情で目があった聖人の瞳は、
琥珀色の色素の薄い美しい色をして輝いていた。
「僕の望みなんです。この為に僕は・・・・。」
雑踏の中で、かき消されたその言葉に、瑠維の瞳が大きく見開かれた。
自分の中の何かが大きく揺さぶられる感覚があった。
「もし、あいつが悪意を持って俺の好意さえ利用しようと
したのなら・・。何を企んでるんですか??」
信用の出来ない父親。
いつも疑問だった・・。
ギリッと歯を食いしばった瑠維を、聖人は優しい瞳で見つめていた。
「南條さんは、自分の正義をちゃんと持っている方ですね・・。
丁度良かった、貴方に調べてもらいたい事があります。」
「それで晶を守れるんですか??」
「ええ。少なくとも、最悪の事態は免れる・・。」
その言葉に、瑠維は真剣な表情で大きく頷いた。
「教えて下さい、俺は何をすればいいんですか!?」
瑠維は、決意を込めた瞳で聖人の瞳を静かに見つめていた。