天才策士は一途な愛に跪く。
「・・あの人って誰のこと??」

私は不思議に思って母のほうを見た。


押し黙る母は何も言わない。

「アルバン・・。」

その言葉にビクリと母の表情は動いた。

「アルバン=マックスブラント。」

聖人が言った言葉に、母はビクリと震えてゆっくりと顔を上げた。

「昔、山科のバイオ部門の研究員でしたね。
だけど、彼と、彼の奥様は不慮の事故で亡くなったと聞いています。」

「アルバン??山科くん、一体誰の話??」

心臓が大きく鼓動を打っていた。

聞いたことがない名前・・。
だけど、私はその名前を知っている・・・。

母は青ざめて、下を向いていた。

「・・・君の父親だ。
そして、アルバン=マックスブラントは、天才科学者だった。」

嫌な予感が的中した・・。

「私の・・お父さんは科学者だったの!?」


「嘘・・。そんなの、私・・。全然知らない!!」

驚いて母を見ると、血がにじみ出るほど唇を噛み締めていた。

「何を、そんな戯言を。事故じゃないですよ・・。あれは、事故なんかじゃない・・。」

母が絞り出すような声で呟いた。

何を言ってるんだろう・・。

みんなの話に一人、着いていけない私は困惑していた。

「殺されたのよ!!!彼も、私の大事な姉も!!
あの研究は、、何故か別の会社から発表されて一躍、脚光を浴びたのよ。」

「お・・母さんに、・・お姉さんがいたの??」

嫌な予感がして、不安気に母の方を見上げる。

ドクドクと心臓の鼓動は早まる・・。

偽物の家族・・。

目の前の母は・・本当に母親なの?

長い髪を振り乱して、炎に飛び込んでいった女性。

その人を私は・・。

「お母さんは??・・・私のお母さんは誰なの??」

悲痛な表情で見上げた私に、母は目を反らした。

聖人が、落ち着いた表情で私を見て唇を動かした。
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