天才策士は一途な愛に跪く。

「カスミ=マックスブラント。」

誰・・??

訝し気に見上げた聖人の顔は穏やかだった。

「旧姓は森丘 香澄。
有名なピアニストで
世界を股にかけて活躍していた。
君のお母さんはドイツに留学中に国の研究機関で研究者をしていた、
アルバン氏と恋に落ちて結婚したんだ。」

「香澄・・。カスミ=マックスブラント・・・。」

懐かしい響き・・。
それが、私のお母さんの名前・・?

呆然と呟くと、母が涙を流して私を見た。

「貴方が生まれて、4年後・・・。
日本の研究所に呼ばれて、研究することになったアルバンはある研究を完成させた。
その数か月後、研究棟の火災に巻き込まれたのよ・・。
姉さん、、貴方のお母さんはアルバンを助けに行こうと、
あの日、居ても立ってもいられずに火の海に飛び込んで亡くなった。」

「あの事故は、ただの事故じゃない・・!!
数か月前から、アルバンは怪我をしたり・・。不審な車につけ狙われたり・・。
可笑しなことが起きていたの。」

その言葉に私は、サッと青ざめた。

最近の自分の身に起きた、
可笑しな出来な事が思い出される。

階段から落とされたり、ライフジャケットの傷・・。

マンションの火災。

ゾクりと震えるような感覚が身体を駆け巡った。

「そんな・・。お母さんは本当のお母さんじゃないの?
でも、何で??どうして今まで、本当のことを言ってくれなかったの??」

気が付くと、混乱と倒錯に似た粗々しい感情が噴き出しそうになっていた。

偽物の家族・・・。

私はその中で、自分の居場所を作ろうと必死で努力した。

そんなの・・。
最初から叶わない事だと何処かで解っていた。
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