天才策士は一途な愛に跪く。
知っていたら、諦めもついていたのに・・。
「言えなかった・・・。
言葉を話せなくなった貴方は、ピアノを弾いてる時だけは嬉しそうだった。
だから、アルバンの親族に逆らって私が引き取ったわ。
大好きな姉さんの子を、自分の子のように愛せると思ってたの。
姉さんに似た、長い指が可愛かったわ・・。
だけど、大きくなるにつれて・・。アルバンに似てくる貴方を・・。
アルバンと結婚しなければ、死なずに済んだのにって・・。
何処かで彼を憎む気持ちがあったと思うわ。」
「・・・そんなの。勝手じゃない!!」
私の言葉に恐る恐る顔を上げた母は苦しそうに私を見上げる。
「わたしは・・・、自分のお父さんの話も聞けなかった・・。
そのうちに、新しい家族が出来て、私だけ除け者みたいになって!!
なら、私は一体、何を信じたらいいの!?」
悲痛な叫び声が部屋に響いた。
どうしていいか解らない・・。
私は何を信じたらいいのか解らなかった。
苦痛に歪んで、涙を流している母を見て・・。
私は何の感情も湧かなかった。
「今更、そんな事言われても・・。
私は・・、頭が追い付かない。どうしていいのか・・。」
私は、顔を背けて持っていた鞄の紐をぎゅっと握る。
聖人が私の肩にそっと手を置いた。
「森丘さん、今は一度に色々な事を知った晶が混乱しています。
山科メディカルは、僕が今の責任者です・・。
昔のように易々と、大事な研究員を無駄死にさせるような事はさせません。」
「そんな事、言っちゃ何ですけど。信じられないです・・。
だって、狙われていたことをアルバンは何度も会社に相談していたのに・・。
何もしてくれなかったじゃないですか・・!!」