時を繋ぐ真実の物語<「私の獣」番外編>

「脅しって何だよ。やっぱり、あいつを連れて来たのは間違ってた。お許しください、アメリ様……」


ブランが塀の向こうに消えて数十分。


塀を離れ木陰からブランの帰りを待っていると、カールがため息とともにぼやきはじめた。


「気にしないで、カール。そもそも、あなたばかりに頼っていた私がいけないのよ。負担をかけて、ごめんなさい」


「そんな、アメリ様をお守りするのは俺の大事な役目です。あなたが謝る必要なんてありません」


「……ありがとう、カール」







カールは、代々ロイセン王室に仕える家系なだけあって、その忠誠心をしっかりと引き継いでいる。ことにカイルが国王になってからは、忠誠心は何倍にも増したように感じた。


カールの父親は、かつてのハイデル公国との戦いで命を落とした。息子である彼も、命がけでこの国を、そしてカイルとアメリを守ろうとしてくれている。


そしてカールの忠誠心もまた、子から子へと引き継がれていくのだ。


先の見えぬ未来を、アメリはほんの少し思い描いた。


「あなたのことは、とても頼りにしているわ」


アメリが目を細めれば、赤髪の騎士は照れたように笑ってみせた。





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