時を繋ぐ真実の物語<「私の獣」番外編>
その時だった。


あの、と遠慮がちな声が、木陰にいる三人にかけられる。


振り返れば、見たことのない男が立っていた。年は二十代後半といったところだろうか。肩までの褐色の髪をした、やせぎすの男だ。


モスグリーンの上衣に、茶色の編み上げ靴を履いている。


「あなたですか? この頃、ロイをしつこく訪ねてくるご令嬢というのは……」


ロイとは、あの偏屈な占術師ロイ・ケプラーのことなのだろう。きょとんとした表情のその男は、国王の婚約者であるアメリのことを知らないようだ。


むっと顔をしかめたカールが、「この方は……」とアメリの前に立つ。


「大丈夫よ、カール」


アメリは微笑でカールをなだめると、「その通りでございます」と礼儀正しく答えた。







「そうですか。お会いできて良かった。母が、ロイにいつも冷たくあしらわれているあなたのことを心配していましたので」


ホッとした顔を見せるその男は、悪い人ではなさそうだ。


「お母様、ですか?」


アメリが首を傾げれば、男は改まったように姿勢を正した。


「申し遅れました。私の名前は、ダニエル・アンカーソンと申します。母がこの邸に長年勤めていまして、ロイとは幼い頃からの仲です。今は隣国であるカダール公国の城で働いているのですが、この度里帰りをしていまして、母にあなたのことを聞いた次第です」
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