時を繋ぐ真実の物語<「私の獣」番外編>
ケプラー邸からの帰り。


青々と生い茂る広野を馬車で駆け抜けながら、アメリは浮かない気持ちで外の景色を眺めていた。


「しかしひどい父親だな。子供の才能に嫉妬して、家業もろとも放棄するだなんて。俺には、考えられない」


御者席に座ったカールが、手綱を握り締めながら苦々しく言う。


「お前の親父さんは、人間が出来てたからな。そんなこと、あり得ないだろ。まあ、俺の親も口うるさいけどさすがに子供を置いて出て行ったりはしないだろうけどな」


ブランが、しみじみとそれに答えた。


「ブランのご両親は、近くに住まれているの?」


アメリの問いに、「いいえ」とブランはかぶりを振った。


「ど田舎のリルべで、薬屋を営んでいます。優秀な兄が二人もいるから、俺は好き勝手やらせてもらってるんですけどね。それにしてもいまだに信じられないな、ヴァンさんがリルべの領主になっただなんて。今度会ったら実家を贔屓にしてもらうよう、ゴマをすっとかないと」







馬車はやがて、煉瓦道のリエーヌに差し掛かった。


シルビエ大聖堂の三角屋根が間近に迫ると、馬車や人々で活気に満ちた町の様子が見えてくる。


ハイデル公国に初の大勝利をおさめてからというもの、王都リエーヌは様変わりした。ひび割れていた煉瓦道は綺麗に舗装され、閉店を余儀なくされていた店も次々と営業を再開した。


帽子屋に仕立て屋、そしてガラス屋。とりわけ軒先に色とりどりのガラス細工を並べたガラス屋は思わず目を奪われるほどに美しく、リエーヌの活気を盛り立てている。



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