うぶ婚~一途な副社長からの溺愛がとまりません~
「失礼します」

断りを入れて副社長室に足を踏み入れると、私に気づいた副社長は仕事をしていた手を止めた。

慣れていない私は、彼と目が合うとドキッとしてしまう。

それというのも副社長はいつも硬い表情で笑ったところを誰も見たことがないほど、感情を表に出さない。

切れ長の瞳に見つめられると、大抵の社員は怖じ気づくのにも納得できる。

そういえばなにかと副社長と接することが多い堀内さんでさえ、副社長と目が合っただけで生きた心地がしない……だなんて、オーバーなことを言っていた。

そんなことを思い出しながらも彼の方へ歩み寄り、社長に頼まれていた書類を差し出した。

「社長から預かってまいりました」

受け取ると副社長はため息を漏らし、そのまま背もたれに寄りかかった。

「見なくてもわかる。どうせくだらない伝言かなにかだろ?」

呆れたように話す彼に私は心の中で「その通りです」と思うものの、口には出さない。
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