君のいた時を愛して~ I Love You ~
 俺は仕事の合間に時計を何度も見ては、ポケットの中のPHSが振動しないかと、何度もポケットに手を突っ込んでみたりした。

(・・・・・・・・おかしいな、もう、サチ病院から帰ってくる頃なのに、帰ったら連絡する約束なのになぁ・・・・・・・・)

 俺はため息をつくと書類をしまい、制服に腕を通してフロアーへ向かった。
 夕方から夕食の支度時間はスーパーにとっては戦争だ。すべてのレジを開放し、パートとアルバイトをフル回転させてレジを回す傍らで、生鮮食品から加工食品まで決まった量の在庫を随時棚に補給していく必要がある。これはバイトも社員も変わりなく、前に勤めていたスーパーも今務めているスーパーも変わりはない。全員が戦闘状態の中で、お客に声を掛けられれば零れそうなとまではいかないものの、笑顔で殺気を隠して丁寧に接しなくてはいけない。そういう意味では、バイトからの叩き上げである俺は百戦錬磨というのがピッタリのシチュエーションだが、今日だけはサチのことが気になり、俺はフロアーを埋め尽くす顧客から逃げるように、その間を泳ぐようにしてレジ周りの状態や、棚の在庫状況などを見て回った。

☆☆☆

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