冷徹王子と成り代わり花嫁契約
慌てて最後の糸を解こうと手を引くと、小口に付けられた錠前の金具の部分に手首を引っ掛けてしまった。
ピリッと小さく鋭い痛みが走ってそこを見れば、糸が少し擦れて皮膚が切れてしまったようで、血が滲んでいる。
しかし、今はそんなことを気にしている暇はない。
書斎の入口の方から、複数人の足音が迫ってきている。
私は《血印の書》を絶対に話すものかと抱きしめて、奥の本棚に向かって再び走り出した。
「ここね……!」
私の身長ほどの高さの棚を動かすと、しゃがめば人一人分通れるほどの穴が現れた。
ほっとため息をついて、高さを確認するため穴から少しだけ顔を出してみる。