冷徹王子と成り代わり花嫁契約
「う、嘘でしょう……」
すぐに飛び出さなくて良かったと、心から思う。
ここから地上に降りるには大した高さではなかった、が。
既に私の逃亡は城中に知れ渡っていたらしく、正門に繋がるその道は兵士で守られていた。複数の兵士が目を光らせて、周囲を見回している。
――ここからは、逃げられない。
背後からは、扉を無理矢理突破しようとする爆発に似た音が何度も聞こえる。
蹴破られるのも、時間の問題だ。
「どうしましょう……もう、打つ手が……」
《血印の書》を抱きしめる腕の力を強くして、私は兵士達を見下ろした。
一か八かこのまま飛び降りるか?いや、そんなことをしたら着地硬直の間に捕まってしまう――。