冷徹王子と成り代わり花嫁契約
「だ、誰……?ヴァローナ?」
自分で言って気がついたが、彼は地上にいる。ならば、エリオット王子が駆け付けてくれたのだろうか。あるいは……。
「やあ。やっと見つけたよ」
考えないようにしていた最悪の事態が現実となってしまった。
「……クリストフ、王子……」
初対面の時の優雅で優しい微笑みはそこにはなく、ただ冷酷に、鋭く私を睨みつける男が、そこにいた。
「《血印の書》はどこかな?」
「あれは、元々あなたの物じゃないわ」
腰のあたり、パンツとシャツの間に挟み込み、ベルトで縛り上げて固定してある《血印の書》を彼から守るように、私は正面を向いたままでじりじりと後ずさった。
クリストフ王子はそんな私を嘲るように口角を上げて、腰に下げていた鞘からサーベルを抜き取った。