冷徹王子と成り代わり花嫁契約
「っ、しまっ……」
焦るあまりに沈んだ地面に足を取られ、私の身体は放り出された。
転んだ先は幸いにも乾いた地面だったものの、これによって、クリストフ王子に一気に距離を詰められてしまった。
「追いかけっこは終わりかな?」
サーベルを振りかぶって、男は不気味な笑顔を湛えている。
「何が王子よ!このペテン師!」
「心外だな。まあ、どうせすぐ口が聞けなくなるんだ。言いたいことがあるなら聞いてあげよう」
嘘をついて騙そうとしたのは私も同じだが、この人は最低最悪だ。
何を企んでいるのか知らないが、女性にこんなことをするだなんて。
「私を殺す前に教えて」
「内容による」
「この《血印の書》を手に入れて、何をするつもり?これは契約者が持っていないと、意味を成さない物ではなくて?」
封印が解かれずに厳重に保管されていたということは、彼らには開ける手立てがなかったということだろう。
つまりは、ロゼッタがいなくてはいけない。
だから、クリストフ王子はあんなにもロゼッタに固執していたのだろう。