秘密の恋は1年後

「今日から一緒に暮らすんだから、そんなに緊張しないで」
「し、してませんよ!?」

 なんて言い返すものの、強がりもいいところ。


「そうなの? 意外だなぁ。俺はすっごく楽しみだし、ドキドキしてるけど」
「っ!?」

 彼は私の右手を取って、自分の左胸にあてがった。


「ね? ちょっとドキドキしてるだろ?」
「……わかりませんっ」

 彼は着やせするタイプなのか、ほどよく引き締まって隆起している胸板に触れてしまい、指先までドキドキして微かに震えてしまいそうになる。


「緊張してないなら、キスできる?」

 言葉では普通を装うけれど、明らかに動揺している私をからかう彼が、今度は目の前に顔を寄せてきた。


「俺たち、付き合ってるんだから。これくらいしようよ」

 何気ないひと言で、途端に切なくなった。
 彼にとっては、キス〝くらい〟なのだ。私にとっては、とんでもない大ごとなのに。


「……しません。キスなんて、したくないです」

 ショックを隠しきれず、俯く。
 とても正面から見れなかったけれど、彼も少し戸惑った様子でいるのを感じた。

< 101 / 346 >

この作品をシェア

pagetop