秘密の恋は1年後

「尚斗さんのことが……」
「聞こえない」

 横顔を覗き込んで数分ぶりに目が合った瞬間、彼女が息をのんだのが伝わってきた。
 細かく震える瞳をひたすら見つめて、口を割るのを今か今かと心待ちにする。


「す、すすっ、好き、だからです」

 思いがけないタイミングで、告白の返事を言葉にしてくれた彼女に驚かされた。
 完全に不意を突かれ、俺も言葉が出てこなくなる。


「聞こえました……よね?」
「ふーん、まひるは俺のことが好きなんだ」

 大きく鳴る鼓動をひた隠し、変わらぬ態度で返事をする。
 ひとつだけ頷いた彼女は、夏の夕日のような赤さを帯びたまま口を噤んだ。


「お前が俺のものになるってことくらい、わかりきってたけどな」
「えっ!? どうしてですか?」

 勢いで口走ると、彼女が心底驚いて顔を跳ね上げた。

 左手を彼女のうなじに沿え、近距離で見つめる。
 瞳孔に俺を焼きつかせるように、じっと視線を絡めた。

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