秘密の恋は1年後

「千堂社長っていつ見ても素敵だよね……。彼女いるのかな?」
「……さ、さぁ? いるとは思うけど」

 まさか、その彼女が私だなんて言えるはずもなく、動揺を隠して当たり障りない返事をするに留めた。
 確かに素敵ではあるけれど、会社での紳士的な彼は表向きの姿で……。本当の彼はどちらかというと真逆のタイプだ。

 私も表向きのそんな彼に長く片想いをしてきたから、同僚が羨望の眼差しを向けてしまうのは痛いほどよくわかる。
 でも、今となっては堂々と見つめることで、誰かに気づかれてはいけないと、つい目をそらしてしまった。


 表示灯が点滅し、エレベーターの到着を報せる。
 並んでいた順に乗り込むと、偶然社長の左隣に立ってしまった。

 隣に立つ同僚と一緒に、彼に会釈をして視線を正面に向けると、エレベーターが動き出した。
 誰にも勘付かれないためには、業務にかかわる接触以外はできるだけ避けるべきだと思ってきたのに、こんな密室で隣り合うだけでドキドキしてしまう。

< 141 / 346 >

この作品をシェア

pagetop