秘密の恋は1年後
ーー水曜日の今日は、社員研修を委託する予定の外部企業との打ち合わせが午前中に予定されていて、朝から少し慌ただしかった。
男性の先輩と一緒に訪問し、十二時前まで話を伺ってきたところだ。
「俺は別件で寄っていくところがあるから、ここで」
「はい。お気を付けて」
先輩と帰りがけに別れ、駅まで向かう間、携帯を確認するけれど、会社からの連絡が入っていた以外は特になく、尚斗さんからはメッセージの返信がないままだ。
忙しすぎて倒れているのでは、なんて心配はしなくとも、今日も出社しているようだったから大丈夫だと思う。
でも、社長職に就いてまだ二カ月ほど。
オーバーワークで本当に倒れなければいいけれど……。
「麻生さん?」
駅前のロータリーを歩いていると、後ろから声をかけられて足を止めた。
振り向くけれど特に知った顔は見当たらず、空耳かと首を傾げていると、もう一度呼ばれて視線を移した。
「えっ、愛斗さん!?」
艶黒のセダンの運転席から降りてくる長身は、スーツ姿の愛斗さんだった。