秘密の恋は1年後
私道にテラス席も設けられているこの店は、外観から雰囲気がいい。
「俺のお気に入りの店なんだ。ちょっとゆっくりしよう」
「素敵なお店ですね……」
「付き合う前の、部下だった結衣をここに連れ出したこともあるよ。誰にも見つからずに会うにはぴったりでしょ?」
彼がドアを開けてスマートにエスコートしてくれる。非の打ちどころなく完璧そうな愛斗さんが、当時社内で大人気だったのが、端々から伝わってくるようだった。
「いらっしゃい、愛斗くん。いつもの席でいい?」
「はい」
出迎えてくれた五十代半ばと思われるシェフの男性は、控えめな顎髭がダンディーだ。
案内された席に向かい合って座り、テーブルの端に置かれているメニューを広げた愛斗さんは、どれも美味しいから食べたいものを選んでと言った。
食事の前にアイスティーが出され、ストローを挿した。フレッシュレモンの輪切りが二枚ずつ添えられていて、グラスに浮かべるとさわやかな酸味が微かに広がって、午前中の疲れが癒される。
愛斗さんとは、代々木の自宅でも同じように向きあったことがあるのに、なんだかドキドキしてきてしまった。