秘密の恋は1年後
「尚斗さんも、あまり麻生さんを困らせたらかわいそうですよ?」
「結衣ちゃんも、兄貴の手のひらで転がされたクチ? 兄貴はなんで結衣ちゃんを?」
「何年前の話をさせるつもり? 俺たちのことはいいよ」
上手く交わされてしまい、結衣ちゃんから当時のことを聞くタイミングを消されてしまった。
兄貴の会社は社内恋愛が禁止で、とても厳しい環境だったはずなのに、どうやって彼女の気持ちを繋ぎ止めていたんだろう。
同棲してたのは聞いたけど、俺に至ってはそれすら拒否されているような状況で。
しかも、愛を交わす営みに不満を持たれたままかもしれないなんて、絶望的な気がしてくる。
「そういえば、彼女が話してくれたんだけどさ。入社してからずっとお前のことが好きだったらしいよ」
「……は?」
入社してからずっと、って……。俺が先に好きになったと思ってたから、必死に口説き落とそうとしたり、柄にもない甘ったるい男を演じたのに。
まひる、覚えてろよ……。