秘密の恋は1年後

 今日の収穫は新刊二冊。うち一冊は、千堂社長に似たヒーローが描かれていたので即決だった。
 数日前に社長の相手をこの目で見てしまい、どう考えても失恋決定だと思うのに、私は未だ片想いを続けている。


「楽しみだなぁ。どっちから読もうかな……」

 家族や友人にも打ち明けていないこの趣味は、そうそうやめられない。それに、失恋した私にとって、想像の世界は優しく癒してくれるのだ。
 書店のカバーをつけてもらった二冊を手に、わくわくしながら社に戻った。


「わっ!!」

 エントランス階でエレベーターに乗ろうと角を曲がったら、出会い頭に誰かとぶつかってしまった。
 その拍子に私は後ろに転んでしまい、持っていた財布と本が黒御影石の床に散らばり落ちた。


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