秘密の恋は1年後
「おかえりなさい」
愛斗さん夫婦のようにラブラブなお出迎えにも憧れるけれど、現実はそう甘くない。
だけど、スーツ姿で凛々しい彼をようやくひとり占めできると思うと、抱きつきたくなる衝動に駆られる。
「え、なに?」
期待しつつ目の前で立ったままでいると、彼は長身から不思議そうに問いかけてきた。
だけど、特になにも起こりそうにないので、内心しゅんとする。
「さっきちょっと雨に打たれたから、シャワー浴びてくる」
私の横を通り過ぎた彼は書斎にバッグを置き、スーツをハンガーに掛けることなくデスクチェアの背にかけ、着替えを持って洗面室に入っていった。
愛斗さんみたいに、おかえりのキスがないと不機嫌とか、甘い生活をしてみたいんだけどなぁ……。そういうところは似てくれなかったらしい。
少しだけ雨に濡れたスーツを明日クリーニングに出すために、ハンガーにかけてリビングに持ち出した。