秘密の恋は1年後
腕に抱えたスーツからは、彼が好んで使っている爽やかな匂いがほのかに漂う。
「尚斗さんの香りがする……」
時間が経ち、スーツに移った残り香を求めて、思わず顔を埋めてしまった。
クローゼットには彼の香水コレクションがあって、青く透き通った瓶やラタンでカバーされた瓶が並んでいる。
シトラスやマリンの香りの他にも、石鹸やグリーン系の香りなどを好んでいると教えてくれた通り、どれも嫌味なく似合っていて、彼の魅力を引き立てる欠かせないアイテムだと思う。
「……いい匂い」
すうっと香りを取り込むと、条件反射のようにうっとりしてしまった。
会社では社長で憧れの的の彼と、こうして一緒に暮らしているなんてやっぱり夢みたいだなぁ。
さっきはしゅんとしてしまったけれど、ふたりの秘密が日々増えていく幸せを感じ、我儘になりかけた気持ちを抑えて夕食の支度にとりかかった。