秘密の恋は1年後
「み、ミステリーです」
「好きな作家はいるの?」
「え、えっと……」
口ごもっていると、今度は彼が私の手から本を奪い、カバーを付けた表紙を捲ってしまった。
返してもらおうとすると、彼は手を高く上げて私を避ける。
「社長、お願いします。返していただけませんか?」
「〝私の純潔を捧げます~優雅な社長の甘い命令~〟か……。楽しそうなミステリーだね」
私の願いむなしく、ご丁寧に副題まで読み上げた彼は、いつも通りの優しい微笑みを浮かべる。
「あ、あのっ、それは」
「一度、預からせていただきます」
私の楽しみが、片想いと共に去っていく。
秘密の趣味が、一番知られたくない千堂社長に見られてしまうなんて!
タイトル通りのセクシーな場面を読まれたらと思うと、絶望感に襲われた。