秘密の恋は1年後

 尚斗さんは、どれだけ傷ついたんだろう。
 きっとすごく好きで、もしかしたら未来を考えていた人かもしれない。
 それなのに、多忙ですれ違ったからって裏切られるなんて……。

 どんな風に出会って、恋を実らせて、愛し合ったのかは分からないけれど、少なくとも私が知っている尚斗さんは、相手を悲しませるようなことはしない人だ。

 もし、それが相手に伝わっていたらと、当時の彼の心に想いを巡らせてみるけれど、理解なんてできるはずもなく、ただただ胸の奥が彼への想いで満たされていく。

 そして、今の彼は、心の傷を負ったままでいるのか気になってしまった。


 帰宅して二時間ほど経った頃、尚斗さんが帰ってきた。


「おかえりなさい」
「ただいま」

 寝支度を整えて待っていた私が玄関で出迎えると、彼は靴を脱ぐ間もなく、すぐに抱きしめてきた。


「……尚斗さん?」

 同棲をして初めてのことに驚きつつ、そっとスーツの背中に両手を添える。

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