秘密の恋は1年後

 三十階に着き、社長が予定外の来客や業務に追われていないか確認するため、秘書の沢村さんを呼び出した。


「社長はお席にいらっしゃいますので、大丈夫ですよ」
「ありがとうございます」

 あとは返してもらうだけ。
 今日の一件で彼にどう思われたか気になるところではあるけれど、最初から私に振り向いてくれる可能性はなかったんだから、悩むだけ無駄なのかもしれない。


 磨りガラスになった社長室のドアを三回ノックすると、まもなく「どうぞ」と返事が聞こえた。


「失礼いたします。人事部の麻生です」
「お疲れさま、待っていましたよ」

 一礼して、部屋の奥に置かれたエグゼクティブデスクにいる彼と目を合わせた。

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