秘密の恋は1年後

 もし、私の予感が当たっているとしたら、この女性は愛斗さんが話していた過去の恋人だ。
 これを彼が見たら、どんな顔をするだろう。
 複雑な気分で、この女性と過ごした時間を思い出すのだろうか。

 なんだか尚斗さんが遠くなってしまう気がして、怖くなる。
 気に病んでも答えなんて出ないのに、私と出会う前の彼を知らないだけで、こんなに不安になるとは思っていなかった。


 それから、先にシャワーを浴びて、夕食の支度に取り掛かった。
 今夜はチーズハンバーグにする予定だったのに、チーズを買い忘れてしまったので気分じゃなくなり、夏野菜と合挽き肉のキーマカレーにした。

 グツグツと煮詰まる音が、私の心の奥の不安の音に似ている。
 ポテトサラダの胡瓜を夢中で薄切りにしていたら、三本も使ってしまっていた。


「はぁ……」

 くすんだ色をはらんだようなため息が出た。
 切りすぎた胡瓜の残りは、酢の物にでもしよう。

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