秘密の恋は1年後

「表紙の男性が、どことなく私に似ている気がするのですが」
「そ、そうですか!? まだちゃんと見ていないので……」

 焦って答えるも、なかなか苦しい逃げ方だ。
 表紙を見ないで買うなんてことはありえないだろう。だけど、彼に似ているから買ったなんて気づかれたくない。


「麻生さんの素敵なご趣味が分かってよかったです。社員のことを知るのは、経営者として当然のことですからね」
「……このことは、社長の胸にしまっていただけないでしょうか」

 涼しげな瞳の彼は、なにも言わずに私を見つめる。
 誰とも共有せず、ひとりで楽しむ趣味だったはずなのに、彼は面白がっているようだ。
 でも、片想いはそう簡単に消えるものではなく、彼とふたりきりで話している状況に我に返った。

 まっすぐなその瞳が、私だけを映している。
 つい最近まで話したこともなかったのに、彼を独占できているのが信じられなくて、途端にドキドキしてきた。


「明日の夜を、俺にくれるなら」

 そう言うと、彼は不敵な笑みを浮かべて見つめてくる。

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