秘密の恋は1年後

 ――人事の仕事は、意外と慌ただしい。やることは多岐に渡り、社員ひとりひとりが活躍できるようにするため、心を削る時もある。


「先輩、少し相談に乗ってもらってもいいですか?」

 先日、現状に不満や不安を抱えている社員と話した。もちろん、先輩も同席していて、評価業務に携わっている私も同席させてもらったのだ。だけど、どういう対応がベストなのかとずっと考えている。
 結局、その日は転職か異動を希望するという本人の意思を尊重するにとどまり、また近々席を設けることになったのだ。


「この前のことなら、麻生さんひとりで抱え込まなくても大丈夫だよ。俺が引き継いで対応するし」
「でも……なんとかして、もう一度気持ちを切り替えてもらえる方法があればと思ってしまうんです」

 私がもっと親しんでもらえる人事だったら、もう少し腹を割って話してくれただろうか。
 先輩だったら、どう考えて決断していくんだろう。


「じゃあ、麻生さんならどういう結論を出すか考えてみて。正解も不正解も求めないけど、それで麻生さんの中でもスッキリできるならいいと思うし」
「はい。もう少し考えてみます」

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