秘密の恋は1年後
「まひるは、俺が会社を辞めるって言ったらどうする?」
グラスに赤ワインを注ぎながら、不意に彼が問いかけてきた。
「なんですか、突然。まさか、そんな悩みを……」
「ないよ。これからって時に弱腰になる男じゃない」
くしゃっと目尻に皺を寄せて微笑む彼に、ホッとさせられた。
彼が社長になって半年も経っていないのだから、現実味のない話だ。
だけど、彼だって押しつぶされそうになることがあってもおかしくはない。
日々の重責と確実な利益を求められ続けている彼が、一日たりとも無駄に過ごさずにいるのは、よくわかっている。親会社との兼ね合いもあるし、後に引けない立ち位置に若くして登りつめてしまった自覚がそうさせるのだろう。
でも、尚斗さんは心の強い人だ。
そして、強引な中にも繊細さを忍ばせ、人を引き付ける魅力がある。