秘密の恋は1年後
「もし、尚斗さんが辞めることになったら、驚くけれど反対はしないと思います」
「どうして?」
「ついていくからです。私は、尚斗さんがいるところにいたいと思うはずです」
一瞬、驚いた顔をした彼が、次の瞬間には優しい笑顔を見せてくれた。
「嬉しいこと言ってくれるじゃん」
私の髪を指で梳いて褒めてくれた彼は、きっと照れ隠しを忘れている。耳が真っ赤だ。
「もう仕事の話はしないんだった」
「そうですよ、お風呂でおしまいって言ったのに」
「ごめん、ごめん」
尚斗さんが、ワイングラスのステアに長い指を絡めて持ちながら、左手で私を引き寄せた。
肩に頭を預け、温かくて平和な夜のひとときの空気が幸せで、なんとなく目を閉じる。
彼がワインを飲み、グラスをテーブルに置いた音がした。
もたれていた私も、そのタイミングで身体を起こして座り直す。
「……あれ? アラームですか?」
テーブルにある彼の携帯が、最小の音量で鳴っている。
尚斗さんはすぐにそれを止めて、私に向き直った。
そして、両腕の中にすっぽりと私を納め、やんわりと抱きしめてくれる。