秘密の恋は1年後

「相手にしないで突き放せる俺と、お人よし過ぎて隙を見せるお前を一緒にするな」

 彼の言葉に、口を噤む。
 言われてみたら、その通りだからだ。街角でも話しかけられたら立ち止まることがあるし、困っている人を放っておけない性分だ。


「隙を突いて入り込もうとする男なんて、ごまんといるんだからな? わかったか?」
「……でも、さっきの女性は」
「こういうところで事を荒立てるのは好ましくないから、それとなく対応して断ったよ」

 断った、ってことは、つまり……。


「ナンパされたんですか!?」
「別に驚くことじゃない。いつものことだ」
「いつもの……こと……」

 尚斗さんが人一倍目を引く存在なのは、身を以て知っている。
 まさか日常的に声をかけられているなんて、考えたこともなかった。会社では見せない彼の本性を知ってからというもの、女性をあまり寄せ付けない雰囲気を感じ取っていたからだろう。
 でも、外では、見目麗しく優しい〝千堂社長の顔〟なのだから、容易に想像がつく。

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