秘密の恋は1年後

 なんだか嬉しくて、頬が緩む。

 嫉妬も独占欲も、意地悪も強引さも、なにもかもが私に向けられたものなのだ。
 会社では絶対に見せない表情も、こうして人目を忍んでするデートも。

 そして、胸元で輝くティファニーも、彼が私を想って選んでくれた。
 忙しい中、時間を割いて考えてくれた彼の、不器用で大胆で、素直じゃない温かな心遣いがいつもここにある。

 初めて祝ってもらった誕生日を、これから何度も思い出しては感動するんだろう。


 彼がふらっと店舗に入っていく。
 すぐに有名なレザー小物のブランドショップと気付いた私は足を止めそうになったけれど、彼の歩みについて行った。


「名刺入れを新調するんですか?」
「そういうわけじゃないけど、なんとなく」

 彼が見ているのは、レザーを編み込んだデザインのカードホルダー。だけど、気に入ったものがなかったのか手に取ることはない。

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