秘密の恋は1年後

「お疲れさまでした。お先に失礼します」

 定時を十分ほど過ぎてから、離席してロッカーで帰り支度をする。
 これから社長とふたりで出かけると思うと、高揚する気分が抑えられなくて、メイクを直してからすぐに役職者のフロアへ向かった。

 昼間のうちに社長からメールが届き、帰りに立ち寄るように言われていたのだ。


 階段で一階上の役員室フロアへやってきた。
 社長室のドアをノックしたら、すぐに彼がドアを開けて迎い入れてくれた。


「お疲れさまです」
「お疲れさま。都合は大丈夫ですか?」
「はい」

 彼も帰り支度を整えていたようで、応接セットのソファにビジネスバッグが置かれ、背もたれにトレンチコートがかけられている。


「ちなみに、ご自宅はどこ?」
「吉祥寺ですが……」
「そう。じゃあ行きましょう」
「えっ、あの」

 バッグとトレンチコートを持った彼は、社長室の施錠を沢村さんに頼み、私の背を押していく。抗うタイミングもなく、一緒にエレベーターに乗ってしまった。

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