秘密の恋は1年後
「あの……」
「どうしました?」
壁に背を預けている彼を見たらにっこりと微笑まれ、鼓動が重力に逆らって飛び跳ねた。
「これからどちらへ?」
「食事に行きましょう。お腹、空いたでしょ?」
そっか、食事に誘ってくれたんだ……。
自宅の場所を聞かれたから、てっきり私の家に行こうとしているのかと、早とちりしてしまった。
もしうちに来るなんてことになったら、昨日以上の大ピンチだった。大好きな小説がびっしりと本棚にあるし、片付けだってしなくてはいけないのだから。
ホッとしていると、途中階でグループ企業の社員が乗り込んできたので、それ以上の会話はできなくなった。
彼と食事に行けるだけでも幸せだ。
それで趣味のことを黙っていてくれるなんて、いいことづくめだとしか思えない。
ほどなくして一階に着き、順に乗り合わせた社員が降りていく。
一番奥に立っていた彼が最後に降り、私はできるだけ距離を置いてエントランスロビーを歩き、彼の背を追った。