秘密の恋は1年後
社長が車寄せに向かっていく。先にタクシーに乗ったのを見て、周りの視線を気にしつつ、私も足早に駆け寄って隣に乗った。
「代々木公園のあたりまでお願いします」
彼が告げた行先に、ぎょっとする。この前彼を見かけたマンションも、公園の近くだったはずだ。
近くに気に入っている店でもあるのかな? それとも、彼の自宅に?
……さすがに社員を自宅に招くことはないはず。彼には結衣さんという相手がいるんだから。
雨の影響もなく、高速道路で快適に代々木まで来た。
一般道に出てからは彼がナビをして、先月通りかかったマンションの車寄せで降り、タクシーは敷地から走り去った。
「あの、ここは……」
「聞かなくてもわかるでしょ? この前いたの、麻生さんだよね?」
「…………」
「早く行こう。食事が待ってる」
やっぱり気づかれてたんだ……。
しかも、趣味を秘密にしてくれるのは口実で、本当はこの前見てしまったことを口外させないための誘いだったのではないかと思えてきた。